野生動物が遠い
野生動物の写真が好きになって、自分でも撮ってみたくなったものの、自分の仕事もそれなりにやっている日々では、なかなかそんな機会は得られない。少なくとも東京のど真ん中で暮らしている自分は、野生動物の写真を撮るためには、そこそこ遠くまで行かなければならない。それは、野生動物が遠い存在だからではなく、人間が彼らを遠くに追いやってしまったからだと感じる。
福島第一原発の影響で人が住めなくなったエリアでは、あっという間に、野生動物たちが、あるじのいなくなった人家を漁り始めて、いまや寝ぐらにしているとも聞く。人間さえこの世にいなければ、東京にも野生動物はたくさんいただろう。いや、そういうことよりも、人間も野生動物の一員として、ほかの動物どうしがそうであるように、それぞれの距離感と食物連鎖の輪を保ちながら、寄り添うように共生していくようなあり方はなかったのだろうか。
このことは、人間を主語にして考えていてはダメなような気がする。何をどんなふうに考えたら面白いかなと思っているなかで、『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(ユヴァル・ノア・ハラリ 著/河出書房新社)という書物に出会って、きっかけを掴みかけている。読み進めてみよう、と思う。