動物たちはわかっている
「動物たちはわかっている」ーー 先入観によるものかもしれないと自覚していても、どうしても、そう感じざるを得ない。彼ら彼女らは、そういう眼をしている。
野生動物の写真を撮りたいと強く思うようになっても、プロではないこともあって、なかなか十分な機会はなく、今のところ、撮影練習のために動物園に足を運ぶことが増えている。仕事の地方出張の合間などにカメラを携えて赴く平日の動物園は決して悪くないが、なんとも言えないこの気持ちはなんだろう……。一度きりの命を動物園で過ごすことになった動物たち。野生ではない動物たち。
ある動物園で、そんなことを思いながらカンガルーのエリアを眺めていたら、子供だろうか、小さめの一頭がひとりで目の前まで近寄ってきた。じっと、しばらく目が合う。数分間。何かがつながったような気がしてカメラを向けたら、それでもずっと、逃げなかった。
動物園によっても飼育環境が大きく異なることもわかってきたし、何かをひとくくりにしたり、一方的な切り口に偏ったりして論じるつもりもない。他人様の仕事をどうこう考えることも、失礼きわまりないだろう。でも、「動物たちは自分の置かれた状況をきっとわかっている」ーー そんな気がしてならない想いで、いつも帰路につく。
そうだ、動物だけの話じゃない。自分は今、野生とはほど遠い人間になってしまっている。人生には檻も柵もないはずなのに、自分でそれを設けてしまっている。とても大切なことを考えさせてくれる場所。動物園に、これからも行こうと思う。
▲動物園で眺めていたら近寄ってきてくれたカンガルー、カメラを向けても逃げなかった(2018年10月)