人間である前に動物でありたい

　愛犬の月命日にブログを立ち上げる。彼が死に際に見せた動物としてのプライドのようなもの。天寿を全うして弱り始めたカラダに鞭打つように、食べられるぎりぎりまで食べ、飲めるまで飲み、動けるまで動き、その「まで」を超えたら、いっさい食べない、飲まない、動かない。飼い主に寄り添えるぎりぎりまで寄り添い、それができなくなったら、一瞬の隙をついて、飼い主が寝落ちしている間に、逝ってしまった。別れ際を見せてくれなかった、彼の生き物としてのプライド。ただの甘えん坊だと思っていた彼が最期に見せつけた、凛とした姿。その衝動が、忘れられない。

　自分もそうありたい。人間である前に動物でありたい。そんな衝動と向き合う日々のなかで偶然出会ったのが、動物写真家・前川貴行氏の写真だった。愛犬が教え残してくれた何かが、氏の写真からも伝わってくるように感じた。そして、自分も撮りたいと思った。撮りたいと思ったんだから、撮ろう。新聞記者をやっていたころから写真は撮っていたし、今も編集者として撮ることはよくあるけど、一個人として「撮りたい」と心から湧き出る対象を見つけたのは、初めて。一つずつ学びながら、撮れる「まで」、撮っていきたいと思っている。

  ▲初めて撮った野生動物の写真（2018年7月　屋久島の西部林道にて）